心語(こころがたり) - カネナリさんのブログ

歌詞や歌の創作とか、持病の心臓病とか、備忘録的な雑記を思いのままに。

カラオケ大会に出場したら入院した話

「カラオケ大会に出場したら入院した話」のタイトル画像です。

4年ぶりに帰ってきたかカラオケ大会に興奮

いろいろあってすっかり報告が遅れてしまいました。

タイミングも大幅にズレたし、書こうか迷ったんですが、書きます。

この日記が誰かの何かに役に立てば幸いです。

 

これは、今年の夏のお話です。

 

7月17日(月)、海の日。

この日、県内某所にて、とあるカラオケ大会の地区予選が行われたのでした。

コロナ禍でしばらく開催していませんでしたが、今回は4年ぶりの開催ということで

興奮を禁じえなかった私は思わず予選にエントリーしてしまったのでした。

 

久々に味わう緊張感

会場は那覇市にある某ショッピングセンター。

予選では1人あたり1分30秒を目安に1コーラスずつ歌唱していくものでした。

この日、私は『海の声』を歌唱しました。

 

実はこの大会、私にとっては人生で初のカラオケ大会出場でした。人前で歌う経験はほとんどしてこなかったので、この日、私はずっとソワソワしておりました。

 

予選はテンポよく進んでいき、いよいよ私の出番がやってきました。目の前にはゲスト審査員として参加した歌手のjimamaさん。そして審査員の皆さん。その後ろには観客の皆様。中央広場なので2階や3階の通路から観覧するお客様も多数いらっしゃいます。改めてイベントの大きさを実感しつつ、久々の緊張感の中で胸をなで下ろしながら『海の声』を歌い始めました。

 

緊張しながらの歌い出し

緊張して少々声が上ずる部分もありましたが、序盤は良好。

 

審査員のみなさんも耳を傾け聞いてくださって、お客様も結構笑顔。何より、ゲスト審査員のjimamaさんがにっこりと微笑みかけて聴いてくださっていたので、次第に落ち着きを取り戻しつつ歌うことができました。

 

しかし、その矢先にそれは起こってしまったのです…。

 

サビの手前でそれは起きた

曲もサビの手前にさしかかり、緊張感が高揚感に変わり始めた頃でした。

 

よーし、このままサビを歌ってフィニッシュだ!と、大きく息を吸い込んだ次の瞬間、突然、「ドンッ!」と体中に電撃が走ったのです。

 

正直、何が起きたかわからなかった

電撃は胸を中心に心臓のあたりをギューッとわしづかみにするような感覚がして、全身に走り抜けていきました。

 

一瞬、機材の漏電で感電したのかと思いました。歌の真っ最中だった私は非常に混乱。頭が真っ白になりました。

 

S-ICDという装置(デバイス)について

私の体内はS-ICD(皮下植え込み型除細動器)という装置が植え込まれています。ペースメーカーの仲間ですが、厳密にいうとペースメーカーとはちょっと違います。

 

ペースメーカーには大まかにいうと3種類あります。

  1. 心臓に刺激を与えて収縮させる機能(ペーシング機能)があるやつ。(CRT)
  2. 心臓が止まった時やヤバい動きをした時に電気ショックを放つやつ(ICD)
  3. ①と②の両方を出来るやつ。(CRT-D)

 

私に植え込まれている装置は、②の仲間で、上記3種の装置は通常、左肩の下あたりの体内に植え込むのに対し、S-ICDは右肋骨の下あたり、または左脇あたりの皮膚の下に植え込むタイプです。私の場合は左脇の下に植え込まれています。このS-ICDが私の心臓が止まった、もしくは深刻な不整脈が起こったと判断すると、心臓に電気ショックを送り、心臓を蘇生させます。

 

私はこのS-ICDを昨年10月に植え込みました。しかし、植え込みをしてからこれまでの約半年間、装置が作動することはありませんでした。

 

時間はあとわずか…

解説が長くなりましたが、ここまではS-ICDが作動してからほんの一瞬の出来事でした。しかし、人間は危機に瀕すると一瞬が何十秒にも感じるものです。

 

私は胸を押さえてうずくまりかけましたが、頭は意外と冷静で、次の瞬間にはもうサビを歌っていました。電気ショックが作動したにも関わらず、私には意識があったのです。

 

歌いながら思いました。これはきっとS-ICDの誤作動だと。実際、意識はあるのだし、サビも前半はなんとか歌い切りました。1分30秒も経過しているし、残りはサビ後半。歌詞にして2フレーズ程度。このまま歌いきってしまおうと思いました。

 

しかし、次の瞬間、2発目が作動してしまったのです…。

 

2発目はヤバかった

私がサビの後半を歌い始めた瞬間、再び「ドンッ!」と衝撃が走りました。(実際、音は鳴っていませんが体感としてはそんな感じです。)1発目は驚きの方が勝っていましたが、2発目は率直に言って痛かったです。胸筋がギューッてなる感じがしました。

 

声を出している途中だった私は、「ウッ!」と声を上げ、ターミネーターの登場シーンのように膝立ちで崩れ落ちてしまい、歌えなくなってしまいました。これはマズイ、危ないヤツだ、と判断した私は、司会の方と音響の方に手で合図を送り、演奏を止めていただきました。

 

逃げるように撤退

演奏が止まるとすぐに、司会者の方が「大丈夫ですか?」と声をかけてくださりました。私がどうにか動こうとすると、「大丈夫ですよ大丈夫ですよ」と気遣ってくださりました。

 

私はお辞儀をしながらそそくさと舞台を降り、小走りで会場を去りました。常々Coccoファンを公言している私ですが、自分の人生においてまさかCoccoさん活動休止直前の伝説のMステ生放送の一幕のような撤退をかますことが起こる日が来るなんて夢にも思いませんでした。

 

会場からの温かいコメント

退場中、私なんかのような者に「大丈夫?でも、とっても良かったわよ」と声をかけてくださったお客様がいらっしゃいました。…なんて優しいお言葉。とっても嬉しかったです。でも、その時は脈がまだおさまっていなくて、正直「すみませんでした。」と告げるのがやっとでした。無礼をお許しください。

 

そして私は会場隅へ

私はそそくさと会場を抜けて、会場隅の売り場通路まで退避しました。

 

するとそこで、またまた「ドンッ!」と電気ショックが作動しました。

3発目です。

 

さすがにこれは動いてはいけないと思いました。

私は売り場通路にも関わらず、その場で座り込んでしまいました。

 

すると、スタッフの方が駆けつけました。

3発目を受けたにも関わらず、私はまだ意識がありました。

 

私はスタッフの方に事情を説明。しかし、段々と息が足りなくなってきました。あれ?なんだか息がしづらいな。

 

…と考えているうちに、4発目が発動しました。

「ドンッ!」

 

1日に4発はさすがにエグい

2~3分の間に4回の作動はさすがにキツかったです。胸は筋肉痛のような感じになっていました。こうなってしまうと、正直、呼吸をするのも怖いです。

 

私はしばらく話せなくなっていました。その頃、駆け付けた身内が119番通報をしてくれました。しかし、私に植え込まれている機械の名称や詳細がわからず、しどろもどろ。私は意識があったので、私が電話を代わり救急に状況を伝え、意識があるので救急車は不要ですと伝えました。

 

今思えば、救急車を呼ぶべきでした。すぐまた再発してもおかしくありませんでしたし、移動中に意識が飛ぶ可能性もありますし。あと、身内には自分の病名や植え込んでいる機械の情報は共有しておくべきだな、と感じました。

 

皆さんは、もしこのようなことがあったらすぐ救急車を呼んでください。

 

スタッフの方の優しさが染みた…

救急とのやり取り後も脈は落ち着かず、私は通路に座り込んだままでした。すると、スタッフの方が椅子を用意してくださりました。その方は、「大丈夫ですよ」と付き添って私の呼吸が落ち着くまで話してくださりました。スタッフさんはこの事を店長様のもとへ速やかに報告。いつでもサポートできる体制にしていますから大丈夫ですよ、と私を安心させることに終始尽力してくださりました。

 

おかげさまで私は安心してかかりつけの病院へ連絡を取ることができました。かかりつけの病院の指示のもと、車の運転を避けてかかりつけの病院へ向かうこととなりました。去り際にスタッフの方が「予選合格を願っています」と言ってくださりました。

 

最後の最後まで優しいお言葉…

本当にありがとうございました。

 

病院でもミラクルがありました

かかりつけの病院の救急に到着したものの、私は思っていたのです。

 

救急の先生は主治医ではない。救急の先生に対応できることは限られている。だから、今日のところはきっと、心電図を取って、その場では異常が見られなくて、「異常が無いから帰ってOKです」って言われるパターンだろうな、と。

 

そう思いながら診察室で待っていました。

ですが、そこに私の機械の植え込み手術をした医師が現れたのです!

 

こんな偶然ってあるんですね

医師(以下、A医師とします)は、「たまたま居たんですよね(笑)」と笑ってくださっていました。いやぁ、たたかもしれませんが救われました。事情を知る先生が居るのと居ないのとでは大違いですもの。とても心強く感じました。

 

A医師なら事情も知っていることだし、「これはきっと装置の誤作動ですね」と笑って返してくれるだろうと、私はそう確信していました。

 

A医師は私のS-ICDからログを読み取りました。これまた偶然なんですが、S-ICDの検査技師の方もこの日たまたま出勤していたのです。

 

A医師と技師の方は一緒に心電図の波形を見比べました。

そしてA医師が告げました。

 

A医師「今日はこのまま入院してください」

私「へ…!?(絶望)」

 

1日に4回も発動するなんて

あとで調べて知った話ですが、ICDが24時間以内に複数回作動した場合は、危険な不整脈が頻発している可能性があるそうです。(その場合は、ただちに救急車で病院へ行くべきです。)

 

私がA医師と技師の方に事情を説明した時も、「2~3分の間に!?」「4回も!?」「意識はあったんですか?」と大変驚かれました。やはり、いつ意識を失ってもおかしくない状況だったようです。

 

そして私がどうして入院になったのかというと、実は今回は誤作動だけど誤作動じゃなかったようなのです。

 

どうやら4回作動した電気ショックのうち、3回は誤作動っぽいものの、1回は本当に不整脈が起きてたっぽいのです…。ただ、ログだけでは判断しかねる部分もあるので、入院して様子を見させてほしい、と。

 

入院中の生活

カラオケ大会出場から、まさかの緊急入院となった私。

 

入院の翌日から検査がたっぷり待ち受けてました。

 

24時間心電図モニターを付けた状態で、採決・採尿・レントゲン・心エコーを行い、心臓リハビリでは普段行っている40W(ワット)以上に負荷をかけ、85Wとか100W近くまで負荷をかけ不整脈の誘発を試みました。

 

しかし、入院中にS-ICDが作動することはありませんでした。

 

A医師の予想では、初日の夜か翌日あたりにもう一度発作があるかもしれないと予想していたようですが、おかげさまでそれも無しでした。

 

でも、それくらい心臓発作は再発しやすいものなので、心臓発作から24時間以内は再発作に警戒すべきなんでしょうね。

 

カラオケ機材は悪くない

ちなみに、カラオケ大会でS-ICDが誤作動を起こしたなんて話をしたら、カラオケのワイヤレスマイクやスピーカーの磁場のせいで誤作動を誘発したのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、技師の方に相談したところ、その可能性は無いそうです。

 

技師の方曰く、「ICD類を植え込んだ患者が、スピーカー等の磁場を発する機械に抱き付きでもしない限り誤作動は起きない」とのことでした。音響関係の皆様、イベント関係の皆様、どうかご安心ください。ペースメーカー類は音響機器の影響を受けることはほぼありません。

 

結局何が原因だったのか

結局、1回だけあった本当の不整脈の原因は何だったのでしょうか。

 

主治医とA医師に確認したところ、はっきりとした原因はわからないとのことでした。

 

おそらく、極度の緊張状態により心拍数が上がり、不整脈を起こしたのではないか、とのこと。

 

先生、それ、一番恥ずかしいヤツです…。

 

今後の流れについて

不整脈は進行性の病気です。一度、不整脈が起こった患者は長い時間の中でゆっくりと不整脈が進行して頻発しやすくなるのだそうです。不整脈が頻発することで、血栓ができやすくなります。血栓ができやすくなると、脳梗塞や突然死のリスクが高まります。

 

今後の対策としましては、

  1. 血液サラサラの薬を飲む
  2. 心拍数が上がりにくいように血圧を下げる
  3. カテーテルアブレーション手術を受ける

です。

 

…ということで、翌月にカテーテルアブレーション手術を受けることとなりました。

 

今回の学びと反省

「病気になっても大好きな歌を大切にしたい」そういう思いで挑んでみたカラオケ大会予選でしたが、結果的に各方面の色々な方々にご迷惑をおかけしてしまいました。

 

イベントを楽しみに来てくださったお客様やイベントスタッフの皆様にご迷惑をおかけしてしまったこと、ひっ迫する医療をさらにひっ迫させてしまったこと、この場をかりてお詫び申し上げます。

 

特発性拡張型心筋症は症例も少なく、まだまだわからないことも多い病気です。今回の件が心筋症を専門とする医療従事者のどなたかの目に留まり、今後の医療の発展に少しでも貢献できれば幸いです。

 

今回の一件で、人前で歌うのも考えもんだな、と感じました。

ですが、歌は好きなので、自分にできる形で心臓とも相談しながら楽しんでいけたらと思います。

 

まずは小規模な場所から歌えたりしたらいいなぁ。

 

 

長文にもかかわらず、読んでいただきありがとうございました!

 

今後も病気のこと、生活のこと、歌のことなどについて書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!